鎮守の杜の千人の大酒盛り

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 普通の人々が、社の醸造蔵にこもって、どぶろく造りをする。
 税金泥棒の財務省からお許しを得て、お神酒の自家醸造をいる神社は全国に43社あるそうだ。
 いずれもが昔からのシキタリで造っていたので、政府が後から酒造免許を持ち出しても、神社本庁に一蹴されたのだろう。ましてやお神酒は神道のもの、天皇家に繋がる神饌なのだから、そこいらの役人に出る幕はなかったに相違ない。
 大正14年までは、醸造量無制限の免許だったと言われるが、第二次大戦後貧乏国の台所を救おうと酒税が導入されたのと同時に、課税されるようになった。 酒税は1000ℓの基本料が8万円、アルコール度が一度上がるごとに8000円加算されて、昨年は180000万円だったそうだ。
 どぶろく造りに従事するのは、選ばれた村の三人衆、当番は一世一代の名誉だった。毎年神占で決まるのだが、春になると今年のどぶろくの出来が、氏子の噂になる。どぶろく造りが上手く行かないのは、当番衆のひごろの行いが悪いからだと非難され、前年の当番まで師匠番として非難される。潔斎し籠って造った新酒が、酸っぱくて飲めなかった歳も再々あったと伝えられている。 そんな時当番衆は、田畑家屋敷を売って新酒を買って償い、倒産し村からでていったという逸話も残っている。
 その日、八ヶ岳山麓北山浦の御座石神社の森には、千人の氏子が集まる。
 思い思いの料理を持ち込み、ブルーシートのうえは、家族親類赤ん坊からシルバーで埋め尽くされる。花のない森に千人が座り込んで、一斉に酒盛りをする。どぶろくはバケツに入ってそれぞれの席に運ばれる。成人、未成年の区別なく茶碗のどぶろくをいただく。豪快なお母さんは赤ん坊にまでどぶろくを飲ませている。なぁに、神様の酒だから、なんず飲めと小気味いい。 神社からの振舞いは、どぶろくの他に鹿肉の塩煮込みと、ウドの粕和えが付く。
 どぶろくから税金を取った税務署長さんも一緒に酔っぱらって踊っている辺りが、なんとも田舎の風景だ。
 


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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