現代美術は死んだ、と言われながらも、一方では現代美術の流通に心を砕きいろいろなパフォーマンスを実行している場もある。軽井沢にはかって「現代美術の巡礼地」と呼ばれ、全国からアートマニュアを引き付けた「セゾン現代美術館」がある。が西武のパワーが落ち、新規のコレクション能力が無くなると共に、現代美術館から20世紀美術館になり変わってしまった。
それに代わって登場したのが、東雲の交差点ちかく、ガラスの建物の「軽井沢ニューアートミュージアム」だ。開館以来、意欲的に現代アートにとりくんできたが、今シーズンの「アートはサイエンス」は現代美術を俯瞰して大変に面白い企画展だ。
デュシャンの「アネミック・シネマ」に始まり、ジョーンズの「自動演奏するヴァイオリン」鬼頭健吾の「active galaxy」など芸術家と科学技術の出会いに始まり、領域の拡張は、土佐尚子の映像シンスタレーションなどテクノロジーを美術に取り込んだ環境作品、
さらにナム・ジュン・パイクに始まったヴィデオ・アートの進化形、ヤン・ヨンリァンのデジタル・コラージュ「川流不息」の超高精細なニュー・リアリズムに驚く、科学が切り開いた”芸術への参加”では3DCGの制作チームdaisy による「HAKONIWA」や「Lazy Arms」など、観賞者もまた芸術家になれる今のインタラクティブ・コンテンツが楽しい。
「Lazy Arms」は鑑賞者の動きに敏感に反応し、多彩な動きや色の変化を見せる。アームは予期せぬリアクションを示し、驚きや笑いの感情まで示唆する。まるで別人格をもち、鑑賞者とともに創作を共有しているかの如くである。
こうしたインタラクティブな鑑賞者の参加に対して、「子供でも楽しめる」というプロモーションをしがちだが、こうした視点の宣伝は現代アートの道筋をますます判らなくして、迷路に向わせてしまうのではなかろうか。子供でも楽しめるかもしれないが、子供には理解できない現代アートの今日が重要だ。
犬・猫・子供にたいする優しさは、大人社会と芸術の退行を意味している。
軽井沢ニューアート・ミュージアムが面白い
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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