軽井沢の朝ごはん

　「おい、明日の朝は5時30分に集合だぞ。」電話の主は、遠藤狐狸庵先生。
　朝靄のたつ雲場池の5時30分が、朝めしのスタートだった。
　集合した4人の悪童は獲物を探して池の周りで待ち構える。　やがてムームーの裾をなびかせて、別荘のマダムがやつてくる。犬種は問わないが、朝のお散歩にお犬様がいないといけない。愛する犬のお散歩をする別荘夫人が目標なのだ。もつと正確にいえば、「犬ほめ」を入り口に、夫人と仲良くなる。
　悪童どもは、繋がれた犬に殺到し、犬ほめをする。名前はポチでも、ハナコでも、なんでもいい。とにかく犬を褒めたおす。顔つきでも、毛並みでも、性格でも、形でもなんでもいい。
　別荘夫人の心の窓をこじあけ、「朝のお食事にご招待」されたら、大成功。
朝の冷気に包まれた別荘のテラスでいただく、サラダとポーチド・エッグ、そして紀伊国屋のパンは最高の朝食だった。
　最近の軽井沢では、朝食メニューのあるカフェがやたら増えた。そこら中で朝食をやっている。
ラタティーユに卵、トーストから、雑誌のグラビアそつくりのプレート・モーニング、焼き魚に納豆、つけもの、味噌汁の正しい日本の朝食まで、いろいろある。
　人気のあるのは旧18号国道沿いのモダン居酒屋オゴッソーの朝食。さわらの西京漬、北海の紅シャケ、玄界灘のサバなど焼魚の充実振り、ごはんの美味さ、煮付け、地卵、つけものなど。ぐるりと店いっぱいにひろがった朱塗りのカウンターが心地よい。店主の人柄が良くダジャレ演芸の名手だが、朝から楽しく爽やかな気分で食事がいただける。