わずか3ヶ月で40万部も売れ、今なおベストセラー街道まっしぐらとあったので、本屋へ足を運んだ。学生時代哲学ほど面白くない授業はなかった。もってまわった難解な理屈で退屈そのものの言葉の連鎖、三木清の哲学入門でも読んでいたほうがはるかに面白かった。さてニーチェの言葉だが黒い無地の装丁に銀で題名がある。権威めかした本の創りに一瞬たじろいだが、開いてみて杞憂と化した。なかの作りはほとんど当世流行の自己啓発本、訳者は否定しているが、お金が欲しい売れて欲しいそのものの作りなのだ。そうは思いながらも「人生を最高に旅せよ!」のオビに気をそそられ「愛は赦す」「愛は欲情することをも赦す」の170番にフリーズしてしまった。キリスト教をきらっていたといわれるニーチェに人間への深い洞察が窺え、「一日の終わりに反省しない」疲れきったときの反省などすべて無意味、さつさと寝て疲れをとれ、まさに人間の生への最高の賛美の言葉と受け取った。ここにあるニーチェは大学のニーチェではなく、生きた哲学者であり、芸術家であり、コピーライターそのもののニーチェだった。
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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