JR東日本から超高級列車 TRAIN SUITE 四季島 が売り出された。
ゆったりとした汽車の旅を楽しもうという考え方には賛成だが、いまいちピンとこないのは何故か、考えてみた。
コンセプトには、日本の美の深さに出会い、時々のうつろいを愛でる、人生の今までにない体験と発見を、鉄道の旅で。とあるが、取り立ててそんなに特別なことはない。
一番前と後ろの展望車はお約束のことがらで、見える景色は普通車の旅と変わらない。ラウンジは銀座の路地裏のような狭いところを無理に着飾ったオミズ風だし、ダイニングもコマゴマとデザインされてうるさい。伝統と和のエッセンスを取り入れたスイート・ルームは、どてらを着た親分衆がどっかと座れば似合うのだが、列車のなかに檜風呂があったらそんなに嬉しいか、といったレベルのデザインで、日本独特のシンプルな美しさも品格もない、近頃流行の和モダンという奴である。
デザイナーはくるまやメガネ、トラクターなどを手掛けてきたアメリカンな奥村清行、日本の建築美には程遠い感性をもっている。料理はこれまたホテル・エドモントでお箸でたべるフランス料理を広めてきた中村勝宏と子分の岩崎均、日本食の深さとはあまり縁のないスタッフだ。そこに衣裳デザインで加わったのが、ユニクロ出身の滝沢直己とくれば、近頃話題のおもてなし・グループで、時のうつろいをかんじるほどのこともない。
要するに滅法コスパの悪い汽車の旅、それが TRAIN SUITE 四季島 なのだ。
四季島スイート一人一泊70万円、二人で140万円、おひとりさまなら105万円、一番安くても二人で100万、ひとり75万でそれにサービス料税金がつき、更に2泊3日の催行となれば掛け算が必要となる。10両編成の汽車に30人の客を乗せて、ごぞんじの関東、東北を走り回る。空を飛んだり、海に潜る訳でもない。いままである線路のうえを走るだけなのだ。
バブルが趣味の方にはお薦めできるが、正常な庶民には関係のない汽車の旅だ。
超コスパの悪い JR四季島
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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