謝罪会見というイベント

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 大勢の記者団、取材カメラの放列の前に長い机、そこに二人乃至数人の大人が起立し、「ご心配、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。」といって最敬礼する。
 あるときは会社倒産、あるときは商品詐称、あるときはヤミ献金、あるときは不倫暴露、あるときは麻薬愛用、あるときはスキャンダルなど等、取り上げたらキリのないほど次々と謝罪会見がある。見ているほうは、あまりに同じ風景のためすっかり麻痺してしまう。
 謝罪会見の意味目的は、反復のなかですっかりうすめられ、その責任のあり方や社会への謝罪より、当事者のヴィジュアル、身振り表情、あらかじめいだいている印象などで判断し、個々の優越感のなかで謝罪風景と向かい合う。謝罪会見は情報化社会のなかの出し物と化し、謝罪はお笑いと同じポジションをえて、人の噂も75日で忘れられてしまう。
 政治家のバラェティ出演のごとく、劇場型人気が本来関係のない投票行動を惹起するごとく、謝罪会見はかぎりなくイベントと化していくのだ。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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