ようやく高原に春が近づいて来た。浅間山に雪型が浮かんでいる。
パリの春は、花と詩人たちのためにある。
ドラクロアの絵で名高いサン・シュルビスの教会のまえには、「詩のマーケット」が立つ。
詩の出版社や、詩の販売をしている古書屋さん、詩人たちが集まって、詩人のサイン会や詩の朗読会が開かれる。そこへ行けば、ボードレールの「悪の華」も、ポール・ヴェルレーヌの「言葉なき恋歌」も、ランボォの「地獄の季節」も聞くことができる。買うこともできる。
ロダン美術館近くのレストランバーでは夜の10時にはローソクの光に変わり、詩の朗誦が始まる。客のなかの誰かが唱者となり、一節暗唱すればワンドリンクがサービスされる。
小学生のころからの詩の朗誦が生きて、長じたのちロマンチストにもなれば、破滅主義者にもなる。スラムと呼ばれる詩の朗誦は、一生付いてまわり、それは3分間の「言葉のスポーツ」と言われている。
バルバラを詠い、プレベールの言葉に酔うのはあたりまえのライフスタイルで、街角には地下鉄の駅名をひたすら朗誦する詩人の乞食やら、カップルのために即興詩を詠ってくれる文学的乞食詩人もいる。
行乞しながら俳句を作った山頭火のような赤毛が沢山いる街、それがパリの春なのだ。
詩人たちの春
コメント
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
コメントを残す