蝶の擬態・ひとの擬態

by

in , ,

mig.jpg
 何十年ぶりに蝶々の見本をみた。小学校の頃は夏休みの宿題は、必ずと言っていいほど蝶々の標本ずくりだった。
 なかには生き物が苦手の友達もいて、彼らは鉱石の見本をつくってきた。善福寺川や石神井川でいろいろな石が採集できた。武蔵野を走り回ればいくつでも蝶の標本はつくれた。ついでに蝉やカブト虫もとって、そっちの採集に夢中な友達に分けた思い出もある。
 蝶の見本をみて興味をそそったのは「擬態」だった。擬態はその名の通り、有様を似せることだが、昆虫の擬態は不思議のひとことに尽きる。擬態にはいろいろの擬態があるらしい。
 隠蔽擬態は、まわりの地面や葉っぱに似せて隠れるという擬態でバッタなどにままみられる。攻撃擬態はカマキリなどに見られ、まわりに同化して攻撃のチャンスを伺う。繁殖擬態はハンマー・オーキッドや蜂の雌に見せて雄を誘惑する。自然界はじつに不思議に充ちていて、ミミズクそっくりの蝶の擬態には、目的はなにとおもわずつぶやいてしまった。
 蝶の紋様や擬態を見ていると、神のイタズラのようにも思ったが、神様は蝶やカメレオンには外見のイタズラを施し、人間には言葉や態度にイタズラをほどこしたのではないか、と思えてきた。
 左翼社会主義者たちが、リベラルと自称するのはとても変だし、審議時間が足りない足りないと発言して、なにも提案しないのは、まさに言葉の擬態にほかならないし、引伸ばしてサボタージュしている時間になぜこのひとたちは主張を提案しないのか、神様は人間にやっかいな擬態を与えてくれたものだと、溜息がでる。
 おじさんがジーンズを着て若者ぶるのは、カジュアルへの擬態かもしれないし、大胆なツン・ブラは、男を捕食する罠にちがいない。胸のあいたイブニングは、夜の蝶への擬態そのものだ。


コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


カテゴリー


月別アーカイブ