Tシャツか、タンクトップ、そんな味気ないファッションが登場して何年になるだろう。
合理性だけですべてをかたずけるアメリカ文化の象徴のようなウェアである。
日本の夏には素晴らしい夏姿があった。
絽や紗といった透けたきものが夏の主役であった。「うすもの」という。
黑留袖や訪問着になった柔らかい絽のきものには何とも言えない情緒と優しさがあった。
紗のきものにも思い切ったスケ感と清涼感があった。
普段着なら夏の花火や夏まつりに粋な浴衣という手もあった。
梅雨があけると間もなくおせいさんが「絽のきもの」をきて団扇を手にお出掛けに連れて行ってくれるのが嬉しかった。
おせいさんの夏姿に恋をしていたのかもしれない。
いまどきのシースルーの夏姿にはないお色気があった。
〽 絽の皺や 忘れたき日の 記憶かな 桂子
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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