腐女子が読み耽る。

　腐女子というと一寸差別のような響きもあるがそうではない。広い意味でオタクな女子たちを指すが、ここではボーイズ・ラブを愛する女性たちとしておこう。むかしからオカマの大好きな女子たちをオコゲ族などと呼んで、自らも「あたし達オコゲだから」と称し、六本木あたりのしかるべきオカマ・クラブの常連になっていた。それがいまではマツコ・デラックスからオスギとピーコまで、すつかり市民権をえてしまったので、コアな女子は小説や漫画に走っている。
　ボーイズ・ラブ略してBLが一般化したのは、少女向けマンガ誌JUNEジュネ。そこから男の同性愛を描いた「ヤマなし、オチなし、意味なし」のやおい作品が人気を博した。腐女子たちはひさしく苦労して、この種の本を手に入れ家族には内緒で愛読してきた。
　腐女子は社会人としての人格とオタク趣味を使い分け、昼間は清楚なOLだったり、ブティックのスタイリストだつたり、看護師だつたりするが、家族にばれることを極端に恐れてきた。
　そこに登場したのが電子書籍、携帯むけのパケット定額制の実施とともに、BLの人気が拡大し電子出版業界では注目のジャンルとなつた。BL普通作品で10000ダウンロードがあたりまえで、確実に売り上げが見込める有力コンテンツになってきた。昼休みまたはアフター6にひとりで携帯を覗いていたら、腐女子の可能性が高い。男子がいい歳をしてみるエロ本は、あたりまえのことと認識されているが、女子が秘かに読み耽る男の同性愛というのはまだまだ理解されにくい。夜ベツトのなかでこつそりとシーツにしのばせた携帯で楽しむボーイズ・ラブの世界、そこに安らぎを見出すのは婚活未遂の腐女子が圧倒的に多いといわれている。