北海道大学の「美術の北大展」にお邪魔してきた。
大学院芸術学講座の院生の皆さんによる労作でもある。死蔵された美術という言葉もあるが、キャンパス内のあちこちに眠っている作品を揺り起こし、その作品の背景にある物語と作品へスポットライトを当てるのは貴重な仕事だ。
北大総合博物館の一室に49点の作品がひしめいていた。恐らく日本一とも思える広大で豊かなキャンパスをもった北大にあって、美術展示の専用空間がないのは不思議なことだが、札幌農学校の発祥に始まった北海道帝国大学にその発想はなかったのだろう。
鈴木幸人先生に集う院生の皆さんが、ブロックごとに解説をして下さり、まず解説を聞く贅沢を味わった。慣れきった学芸員の上から目線の説明ではなく、初々しい処女のごとき控えめな言葉と態度はときに淀み乍らも、じつに新鮮な空気を体験させてくれた。永年顧みられることのなかった作品と若い院生のあたまの上に、裸電球が揺れているような時間を体験した。
第一部の描かれた北大では、どの絵にもポプラやエルムのみどりと学び舎が遠近に描かれて札幌駅近くから三つの駅にまたがる北大の広大なキャンパスを感じた。
クラーク博士の肖像画は滋味あふれる学究の徒といった表情が素晴らしく、いままでのアメリカンなイメージが裏切られて良かった。第二部は北大に生きた画家たち、近藤七郎の婦人像と池田芳郎の校庭が忘れられない。バルビゾン派のような葉を落とした木立が瞼に残っている。
第三部北大に眠る絵画、なんといっても理学部創設の会議がパリで開かれ、帰途フランスの絵を買って帰国したという事実に驚いた。5枚の絵画の裏にある研究者達のロマンが凄い。即座に津軽弁でたしなめてくれる若き乙女の微笑あっての外遊だったのだろうか。
鈴木先生夫妻と集って下さった芸術学講座の院生の皆様に、心からの感謝を。
美術の北大展を楽しむ
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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