絵画に隠された物語…「美男子美術館」なる本が送られてきた。
ほれぼれするほどに傲慢な画家ゴーギャンの自画像に始まり、作者の母性本能を刺激したクールペの傷ついた男、自己陶酔するロセッテイの自画像、女の仮面のしたに自己を見つめたムンク、自分のなかにいつも不安をかって痛々しいシーレ、モンマルトルの娼婦の子として生まれたユトリロ、スペインの血と肉欲が住むピカソ、ダヴィンチのヨハネ、同性愛者の偶像グイド・レーニの聖セバスチャンなど、著者の性向が山盛りの興味深い本だ。
まず美男子という括りに眼をとられた。今時美男子という言葉を登場させるあたりなかなかだ。
普通に考えれば、その方の組合の人々を狙った本かとも思ったが、そうでもないようだ。
美男子は好男子ではない。美丈夫とも異なる。生まれ育ちに於いて貴公子とは違う世界の生きもののようだし、色男金と力はなかりけりのあの色男とも違う。色男ではないから優男であるはずもない。女を迷わすほどの魅力にみちた女殺しといった遊び人ではないようだし、男一匹といった勇ましさも感じない。
これが女性ならば、かなりキャラクターが広がる。いろいろの言い方がある。
コスプレ風の麗人、品のある良家の貴婦人、しとやかな淑女、絶世の美女に始まり、近所の別嬪、佳人薄命、色女、紅一点、から男勝りの女丈夫、オリンピックの名花、祇園の名花は同じ名花でもまったくすぐれ方が逆方向になる。女性だけの表現には、淫婦、妖婦、妖女、悪女の深情けもある。グラマーとか、バンプなどという舶来語にも市民権がある。
もちろん著者山口路子さんは刀自ならざる閨秀作家であり、明日の文豪を期待している。
美男子美術館
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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