絶滅危惧種のレビューが復活した

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絶滅危惧種のレビューが復活した
 「STAS REVUE 秋のおどり」絶滅危惧種の踊りである。
 結論からいうと2.3の景を除いて全体にとてもいい、とても気分のいい舞台だつた。このレベルの舞台はかってラウンジ・ショーとしてラスベガスにあったが、いまは絶滅してしまった。モンマルトルの麓にあるいくつかのナイト・ショーよりははるかに楽しめるレビューになっていた。
 当初、かってのグランドだつた国際劇場のつくりからなかなか脱却できず、中途半端な大道具や舞台作りが邪魔だったが、この浅草ゆめまち劇場に落ち着いてから、やうやくレビューの本質に近ずいてきたような気がする。
 なによりも印象が変わったのは、大劇場向けのメークアップから、アンチームなゆめまち劇場向けのメークになって、キャストがみな美しくなった。眼の前で踊られても当惑しなくなった。一様に肌色もよくなって美人集団にかわったのだ。若い女性が集まって舞台を作っているのだから、デートに出かけるときのような、綺麗な充実感に輝いていなければ意味がない。重ね倒した目張りや、巨大なうそ眼がめだつような、場末のキャバ嬢にも見えるメークアップは絶対に許されない。
 衣装も今回はとてもよかった。色ずかいがシンプルになって洗練されてきた。白と黒とか、紅ひといろとか、ゴールドだけとか、基調色に少しのアクセント・カラーでよりモダーンな色彩感にあふれていた。多色使いになるとまだ少しばかり問題がのこる。男役のスタイルになると、まっくろなレトロになるが、少女歌劇の幻想に囚われていてどうにもならないのだろう。
 いちばんの功労は構成と振付が非常にこなれてきたことだ。観客に不安な気持ちを抱かせずスピーデイに楽しく情景が展開していく。伝統とコンテンポラリーとモダーンが程よくミックスされている。ときにオバケが顔を出すが、これさえなければ第一級のショー・チームといえるだろう。
 SKD由来スタスの魅力は、アップテンポでチャーミングなのだ。 絶滅危惧種は見事に復活をとげていた。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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