パリのカフェで紅茶を飲んではいけない。
何故ならカフェで出てくる紅茶は、恐ろしくいい加減だからだ。
分厚い安もののカップが、これまた分厚い安ものの皿に乗ってでてくる。そえられているのが、紅茶のティー・バックとスプーン。 首つりの小袋に入った紅茶ほどまずいものはない。最近ではガーゼに入ったものやら、四角い特殊な繊維のコブクロのものなどあるが、いずれにしても不味さに変わりはない。
白いポットに入れられてくるお湯もまた、無神経の極みといわざるをえない。だいたいにおいてぬるい。ぬるいお湯が合うのは、日本茶の玉露ぐらいなもので、ぬるいお湯に合う紅茶はこの世に存在しない。
という訳で、コーヒーの苦手の僕がカフェで頼むのは、もっぱらショコラ・ショーになってしまう。カフェという業態は庶民にとってすこぶる便利な店で、ソフト・ドリンクのすべてから朝のクロック・ムッシュ、サラダ、肉までなんでも間に合うのだが、紅茶の扱いだけはいただけない。
そこで紅茶に真面目なサロン・ド・テが登場する。カフェのように街中にある訳ではないが、すこし気取っていくつかある。サン・ド・テでは、首つりのティー・バックはまずでてこない。
なかでも一番のお気に入りは、ホテル・スクリーブの一階にある「アン・テ・リュ・スクリーブ」、お向かいのグラント・ホテルのかの有名なカフェ・ド・ラ・ペなど比べものにならない。
まずリヨンから取り寄せているYUANの茶葉が凄い。そこのお蔭で長い間のダージリン信仰が解け、ブレックファーストとアール・グレイのインぺリアルに変わった。サービスされる器も、茶葉の種類によりイギリス風、北欧風、インド風、中国風と変わる。スイーツも超美味しい。 二階まで吹き抜けのインテリアに螺旋階段、壁には本がぎっしりと並んでいる。
そこにいるHANAさんの心ずかいがとてもいい。こちらのコンディションを読み取って、今日はこちらが、とサーブしてくれる。パリの一か月はいつもスクリーブのHANAさんにお世話になった。
紅茶はサロン・ド・テに限る
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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