立春大吉のご挨拶

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 節分を過ぎていただく年賀状には特別な思いがある。
「立春大吉」と書かれた文字に、第一の節気を無事におえたお互いへの祝福と祈りが込められているような気がする。
 子供のころから可愛がられ、未だに初釜でお世話になっている吉兆さんからは、世界の名物・日本料理を創始された湯木貞一さんの筆になる「立春大吉」の賀状が届く。いちはやく「世界の名物」と墨書した湯木のおじいちゃんの心意気に敬意をささげる。
 もうひとり「立春大吉」の賀状が届くのは、毒蝮三太夫である。
 あれほどの毒舌ながら、人情の厚さ深さにおいて彼ほどの芸人はいない。そもそもは学生時代からの芝居仲間なのだが、舞台で疲れ切った仲間たちをいつも楽屋で笑わせ、癒してくれたのは彼だった。立川談志の独りよがり、わがままにたいし、痛烈な野次をかませ、いつもまわりを大事にしていたのは毒蝮三太夫だった。
 表から読んでも裏から読んでも同じ「立春大吉」は彼にとてもふさわしく映る。
 本郷西片町でのこどものころには、曹洞宗のお寺さんから立春大吉のお札が届いた。魔除け・厄除けと教えられ、背伸びをして玄関の横に貼ったことを覚えている。冬至も春分も判らなかったこどもだったので、どうして節分も終わった今なのか不思議だった。
 こどもの頃は、お札より立春大福餅だった。神田須田町庄之助の春の七草のはいった立春大福餅は嬉しかった。、


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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