40代の末、ガウディ巡礼の旅にでかけた。
前年、ガウディ作品群の写真集を見て、その圧倒的な個性に脳天をやられたからだ。
それまでしばし、ローマ、フェレンツェ、ミラノ、ヴェネチィアなどの美術館通いで、西欧の美術がわかりかけてきたような気分になっていた。
そのすべてを吹っ飛ばしてくれたのが、バルセロナのガウディだった。
サクラダ・ファミリア教会、グエル公園、グエル邸、カーサ・ミラとむさぼるようにガウディの造形をみてあるいた。
完成まで300年かかるといわれていたサクラダ・ファミリアでは、ガランとした未完成の教堂の一隅で、ひとり働いていた日本人から話をきいた。今考えれば主任彫刻家になった外尾悦郎さんだった。
グエル公園の運動場では、支える列柱に突然倒れそうな曲がった石の柱を発見、ガウディの世界観に息をのんだ。50センチほどの単純な丸い石の球体がそこここに転がって見事な宇宙を暗示、どんな人体彫刻より素晴らしいガウディの庭をみた。
深く考えられた哲学的な造形と植物に所以する超自然主義な建築は、公園の片隅に、教会の鐘楼に、アパートの窓に充ち溢れていた。
18本立つ塔の9番目の塔が、このほど完成したと伝えられた。
まだ9本が未完成だが、ITのおかげで2026年にはすべて完成されるという。
民族のシンボルとして、しばしばカタルニア独立運動のデモの広場になっているといわれるが、なんとか無事にガウディの思いが完成することを祈っている。
「世の中に新しい創造などない。あるのは、ただ発見のみ。」アントニオ・ガウディ
神の建築家 アントニオ・ガウディ
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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