この朝、仕立て下ろしの浴衣を着て祇園甲部の芸舞妓一同、八坂神社に「おせんど参り」をする。
お千度ときけば、お百度参りを連想する人がいるかもしれないが、いっぱい、沢山、度々の言霊(ことだま)であり、象徴化された古都古来の表現である。
ご本殿を三回まわってお千度参りとする慣習も、近頃の舞妓さんたちには通じず一回回って良しとする舞妓もいると聞く。
そろそろ夏の訪れを感じる梅雨のさなか、そこここからさっぱりとした浴衣姿の芸妓があらわれ初夏の風をまき散らしながら祇園さんに急ぐ姿はやはり京都ならではの風情である。
お千度参りは祇園だけではない。ことしの祇園祭りの先頭を務めるお稚児さんもこの日お千度参りを果たす。無事健康で祇園祭の稚児を務められますよう、芸舞妓もお家元とともに芸道精進と健康を祈る。
一昔前までは夏の浴衣姿など当たり前の風情だったが、町衆は便利・簡単・手間いらずでティシャツ、タンクトップ、短パンと化し、祇園祭の宵宮ぐらいはと浴衣になっても、色彩過剰下品そのもののカジュアル浴衣となった。
きものの古都京都があんなものをつくるのは信じられないが、すべて金勘定優先の根性が生み出したもの。西陣の落日もこうした経済第一の思想がもたらした自業自得というしかない。
芸舞妓たちの藍ひといろの浴衣がますます美しく引き立つ四条通りではある。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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