祇園甲部の始業式

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 一月七日、祇園甲部の始業式である。
 あちこちの置屋さんから、黒紋付の正装に稲穂のかんざしをつけた芸妓、舞妓が、歌舞練場に集まって来る。
 正月を故郷で過ごしたり、短い海外旅行を楽しんできたり、思い思いの充実した時間を過ごしてきた女性たちである。
 なかには伝統のしきたり通りに「歌舞伎の櫓くぐり」をしてきた芸舞妓もいる。松飾りやしめ縄など正月らしい風景が失われつつある都会の片隅、ここ京都祇園甲部には、平安室町江戸いらいの習俗が受け継がれている。
令和6年始業式.jpg
 歌舞練場の玄関をくぐると、花街のおかーさん、つまり普段お世話になっているお茶屋の女将さんたちがお祝いのお屠蘇で待ち構えている。
お屠蘇を祝ったら先輩のおねぇさん方へのご挨拶やら、春の都をどりプログラム用の写真撮りなど終えて劇場の客席に移る。
 やがて舞台に祇園町の総務さん初め役員、ゲストの皆さんが揃い、始業式が始まる。芸舞妓全員による誓いの朗読、さらにお花売り上げベストテンの発表・売花奨励賞の発表となる。最近ではつる居さんの沙月さんが3年連続第一位をとっていたが、コロナが明けてさらに頑張った芸妓さんは誰だろうと期待する。今年のお花第一位は多麻さんの柚子葉さん、コロナの始まった頃店出しをし、頑張ったのが今ようやく花がひらいたのだろう。最後はお家元の「倭文」の舞でしめられ、始業式は終わる。
都踊りポスター令和6年.jpg 祇園紗矢佳.jpg 祇園ゆずは.jpg
 式が終わればいっせいに今年一年お世話になるお茶屋さんやらお料理やさんへの挨拶回り、大勢のアマチュアカメラマンを引き連れて祇園町のすみずみまで賑やかな時間が訪れる。
 「おめでとうさんどす」「ことしもよろしうおたの申します」芸妓も舞妓も今日一日、何百回もこの言葉を重ねて、始業式の夜の宴会を迎える。
 


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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