京都八坂神社が時ならぬ「コロナ退散」のために、臨時「茅の輪くぐり」をしている。
寺社は本来氏子の苦難のときにこそ祈るべきにも関わらず、おおかたの神社仏閣はそれを忘れ、予め決められている例祭のときだけ形通りの祈りを捧げている例が多い。
八坂神社は全国祇園信仰の総本社ではあるが、同時に京都東山区、右京区、中京区に氏子を抱える氏神様でもある。氏子の通う学校は休みとなり、南座も閉鎖、都をどり、も中止となり、いつもならインバウンドの外人さんがあふれている祇園町にも、コロナの静けさが訪れている。
例年なら七月一か月に及ぶ祇園祭では、山鉾巡行も終わった最後の夏越しの祭りに、末社の疫神社に大きな茅の輪が造られ、疫病退散を祈る。
武漢コロナの緊急事態に急遽、大きな茅の輪が二つも造られ、拝殿前と疫神社の鳥居に取り付けられた。コロナ除けにはもっとも伝統的な祈りのかたちである。
芸妓も舞妓も館のおかあさんも町衆もみな祇園さんの茅の輪をくぐって、コロナ退散を願う。
氏神様は氏子のために、時の氏神になってこその祇園社なのだ。観光客のことばかりに気をとられカラフルなお札づくりに精出すひまがあったら、目の前の氏子の苦しみに眼をむけてこその氏神様である。
あたりまえの祇園さんの時ならぬ「茅の輪くぐり」に日頃の喜捨はむだではなかったと心ひかれた出来事だった。
祇園さんの武漢コロナ退散
コメント
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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