いまこの国には監視カメラが溢れている。
僕は監視カメラのもとで、日々を過ごしている。
コンビニに、街角に、商店街に、駅に、学校に、公園に、ビルの出入り口に、職場に、高速道路に、考えられるほとんどの場所に、監視カメラが取り付けられ、カメラは僕を映している。
なにしろ現在450万台もの監視カメラが作動中にもかかわらず、そのうえPTAのお母さんは子供の通学路にすべて監視カメラをと声をあげ、宝石店では外人ギャングの対策に監視カメラをふやし、パチンコ屋さんは不正パチンカーの防止により高性能な監視カメラをオーダーする。安心を買うのだそうだが、安心まで商品になるとは、資本主義の行方が心配だ。
僕は映してほしいとは思っていないのだが、カメラは四六時中、僕をうつす。そこには肖像権もなければ、プライバシーもない。なのにこれは個人情報ですからという言い訳にしばしば出会う。個人情報と監視カメラは、どこで折り合うのかよく分からないが、奇妙な社会になったものだ。
盗撮に目くじら立てて、監視カメラを推進する。つまり被害者と犯人、両方演じている。スマホのGPSで居所を知られながら、私のプライバシーよ、と大声をあげる。
撮りたいひと、撮られたくないひと、撮って使いたい人、が入り乱れて何が何だかよく分からないのが当世監視カメラ事情なのだ。要は社会に信頼関係という関係が無くなってきたということだろう。
監視カメラを監視するカメラを取り付けている所もあるというから、モリエールもびっくりの市民喜劇なのだ。
監視カメラという市民喜劇
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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