白服から白パンツまで

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 流行業界で長いあいだ女王の地位を確保してきた「黒」が、この春ようやく転落のキザシをみせている。
セクシーな黒いイメージがあきられ、永遠のスタンダード、「白」が復活のきざしをみせている。
 ディーゼルの白いシャツ、ケイトスペードの白いジャケット、エンホールドの白パンツ、ジルサンダーの白キャップ、アルマーニラの白スカート、サンローランの白ジャケット、ヴィトンの白ドレスと数え上げたらきりのない白が春夏のウィンドーに登場している。
 男の白は、ランニング、ティシャツ、パンツは定番だったのだが、いつの頃からかパンツの白、なかでもトランクスの白は消えてしまった。ある日、ユニクロへいってトランクスを買おうと、百に近いデザインの中から、えーと、白、白、白…とたどっていったが、遂に見つからずすべて色物・柄物という現実に愕然としたのを覚えている。ズボンの下まで、女達の喜ぶ柄物となってはもはや男達は、すべてインポテンツ、肝をぬかれた植物人間になってしまったと、気ずかされた。
 白は汚れが目立つからこそ素晴らしい。ラーメンの汁や、ミートソースのトマトが飛ばないように少しばかりの緊張感で、食事を摂るのがとてもいい。白を身に着けていれば、少しは神経を使う。洗剤のコマーシャルにはいつも白い洗濯物がひらひらしている。もしあのコマーシャルに色物の下着が並んでいたらと、考えるだけで気分がなえる。
 素材違いで、白に白を重ねる。 オフ・ホワイトのアウターを着る。 透ける白を部分的に取り入れる。 スパイシーな白い小物をあしらう。 白には白なりのテクニックもある。ちなみに僕は自分に合った色を探すのが億劫で、ワードローブのなかは白が多い。白ときめておくと買い物がとても楽だ。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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