白い漆喰の美しさが、いつまでも眼に残っている。 どこまでも続く漆喰の路地、ところどころに黒い焼き杉板がはさまっている。
若い現代建築家の作った家並に較べ、何十倍も美しい。江戸の美観は平成をかるく超えている。
平らな瓦を主役に、斜めや縦横に漆喰を盛り込んで作られたなまこ壁はほんとうに綺麗だ。倉敷川に面した表通りだけでなく、横町も裏通りもみななまこ壁の家がつづいている。
なまこ壁の家にはシックハウス症候群はない。漆喰は結露を防ぎ、保温に優れ、ホルムアルデヒトを吸収するので、健康にもっともいい建築材だそうだ。
川面に映りこんだ白壁のまちは、江戸にタイムスリッブしたようでもある。
石灰にふのりや粘土を混ぜ練り合わせて作った漆喰は、いまでこそ珍しい工法になったが、5000年前の
エジプトから、4000年前の日本縄文後期にすでに存在した典型的な在来工法だという。
更に追い打ちをかけるのが、焼き杉に囲まれた外壁の凄さ、杉板の表面を焼いて炭化させた黒くなった杉板を腰張りにした家や黒い焼き杉の蔵づくり。水に強く、防虫性保温性、断熱性が高いので蔵には最適だという。ウェルダウンに焼かれた杉の焼き板は大工の知恵のかたまりなのだ。
黒の焼き加減も最近はあらゆる濃度が揃っていて、薄焼きからミディアム、ほとんど炭状態のリアルブラックまで、よりどりみどりのファッション状態になっている。
白い漆喰に魅せられて
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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