金鳥の夏よりは、浴衣の夏が、いかにも日本の夏のように思える。
夏まつりの参道には浴衣がいちばん良く似合うし、浴衣をきちんときこなした母と娘が、団扇を背にさして金魚掬いなどしていると、即良き時代の昔に心が飛んでいく。
ふと今年の浴衣カタログを覗いてびっくりした。
「ときめき恋浴衣」 5点セット 衝撃の1.980円、 浴衣に帯にレースの帯上げ、下駄、巾着と一式揃ってのお値段だ。「極上大寸仕立て」「周りと差がつくこだわりセツト」「華やかなバラのブーケ咲き誇る高級姫浴衣」みな1.980円、とにかく安いということだけは確かだが、いちど袖を通したら二度と着たくはないだろう、というデザイン。
今年は女優スタイルの浴衣をどうぞ、ワンランク上なのでお値段も、18.900円、「キャメリア・クィーン」「プラチナ・プリンセス」「アメジスト・ダリア」といかにもの名前が付けられている。
きものの選び方は、祖母から母へ、母から娘へと代々受け継がれて、タンスが埋められてきたのだが、そうした家族もなくなって、きもの知らずの本人の感覚だけで選ぶのだから、浴衣すらいい柄悪い柄の区別はなくなって、若さがくいつきそうな安易な商品ばかりとなってしまつた。
これが今年の流行というのを見てさらに衝撃をうけた。
浴衣の襟にレースのダテ襟がついている。袖口にもレースがついている。更に裾にもレース。オソロの下駄にも同じレースのリボンがついて、さらに巾着にレースのブーケが寄り添っている。コサージュのリボン、偽パールのぶらさがった帯締め、仕上げはオーガンジーのふんわり兵児帯、浴衣キャバレーでもこれほどの悪趣味はないだろう。浴衣の良さも歴史もすべて否定して、目先だけの浴衣商売があった。
浴衣の夏・にほんの夏
コメント
1件のフィードバック
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歴史もセンスもない着物チェーンが、センスのない若者を育てた弊害が、一気に爆発炎上した感じですね?
唯一の救いは、笑っていいともの1コーナーで、1万円~2500万円の着物を当てるゲームが人気です!
高い物に関しては興味がある若者にとって、見ているだけでなんとなくいい物を選ぶセンスが養えそうです。
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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