京都に「涼菓・浜土産(はまずと)」というお菓子がある。
浪の磯辺にてとれた蛤に、寒天と砂糖などで作られた琥珀羹を流しいれ、真ん中に浜納豆を一粒、しっかりと蓋をし、昔ながらの磯馴篭(そなれかご)にいれてある。添えてある桧葉は、軽い防腐の役割も果たしているという。そんな浜土産が、茶道三千家家元歴代の花押が印刷された和紙に包まれて届けられる。
あぁ、今年も夏がきた、そんな気分になる。
冷やして食べると、琥珀糖の甘さと納豆の味噌風味が調和して夏の味が広がる。
今時こんな手間のかかるお菓子にはまずお目にかかれない。SDGsどころか、スーパー・エス・ディー・ジーズなこの国ならではのお菓子だ。
クリームとチョコレートとイチゴで作るそこいらの洋菓子など足元にも及ばない。餓鬼と大人ほどの差がある。
浜土産を作っているのは、烏丸御池近く「亀谷則克」さんなのだが、勅題菓をつくった「亀谷良則」からの暖簾分けで、お茶やお花の稽古菓子を作って祇園界隈では幅広く愛されたお菓子舗、だけどお茶屋の女将や芸妓さんたちは則克さんの場所を知らない。昔から風呂敷で包まれたため漆の箱でお菓子はとどけられていた。
則克の信条は「昔からの味」を変えない、和菓子という小さな世界に「季節を写す」。この信念こそが毒蝮三太夫をして驚かした「涼菓・浜土産」なのだ。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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