河上恭一郎さんのクリスタルの剣

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 クリスタルの鋭い切先が天をついている。
 日本刀を模したガラスの刀、幅は20㎝程もあろうか。人を切るための刀ではなく、神に捧げる剣の形だからソリはない。1メートル50センチ程の直立したクリスタルの剣の造形に作者の世界観がこもっている。
 もうこの恐ろしいほどの磨きのできる職人さんはいなくなってしまった。こうした人間の至高の技術がどんどん失われている。創りたくとももう造れないのがこの作品てすと、作者は云う。
 河上恭一郎さんのガラスの世界展にいってきた。河上さんの81年の人生がつまっていた。
「用の美」から「オブジェの美」までガラス造形の究極と向かい合った河上さんの世界観が溢れていた。神に捧げた剣と対峙していると、三島由紀夫の生きざまと思想が浮かんでくる。
 会場は坂戸にある城西大学の水田美術館、写楽の大首絵などのコレクションで知られた故水田三喜男氏のために作られた美術館、AIAニューヨークデザイン賞を受賞したStudio SUMOの白と黒に特化した建築だ。
 坂戸のこの辺りには、明海大学やら日本医療科学大学、そして城西大学と正月の箱根駅伝でしか耳にしない大学がひしめき合い、ナビもお手上げのエリアだと知った。なにしろ道に主役がない。半端な幅の道があちこちにある。交差する道も斜めだったり、直角だったり、蛇行していると思ったら僅かに真っ直ぐだったり、素直でまっすぐな道が恋しくなった帰り道であった。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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