故あってふたつの椿姫をみた。 ひとつはザルツブルグの2005版、もうひとつはフェニーチェ座の2004版、いずれも大胆な演出の舞台だが、きわだって異なったのが、二人のプリマの衣裳。
前衛的なネトレプコは、白いシルクのシンプルなスリップ、もうひとりのチョーフィは黒いシースルーのスリップに挑発的なスーパー・ビキニとブラ。
若さに勝るネトレプコはなにもない白のアバンギャルドな空間で自由に気ままにカジュアルなエロティシズムを発散する。大人っぽいチョーフィは計算されつくされた熟成の色気を演じ唄う。白いスリップが奔放な欲望とわがままと殉愛を演じ、黒のシースルーは、雨とふる札びらのなかで、類型的で高慢な挑発を演じる。
それぞれに見ごたえはあったのだが、日本の椿姫の今頃はどのへんかな、の疑問がでた。この国の歌姫のリサイタルに行くと、たな晒しのフランス人形みたいな衣装が圧倒的に多い。ファッションに対するクラシックな人々の意識は、今とかけ離れて不思議なのだ。
椿姫は白か、黒か?
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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