桜の極みは都をどり

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 都をどりのフィナーレは桜のぼんぼりに始まって、ぱっと照明が入ると眼もくらむ都の春になる。
 毎年毎年同じ趣向の終景なのだが、客席からは大きなため息がもれ、都の春の桜の見事さが、舞台いっぱいに広がる。
 鴨川沿いの桜にため息をつき、丸山公園の桜をあび、歌舞練場中庭の枝垂れを愛でたそのあとの舞台にもかかわらず、都をどりのフィナーレは、人々を酔わす。
 町中に溢れるほどに咲き乱れる桜がありながら、その総ての桜のリアリティを超えて、祇園甲部の歌舞練場の舞台に咲く桜は素晴らしい。
 そこに登場する60人の芸妓、舞妓、幼い十代の乙女から女盛りの30代、40代そして老いの手前の女性まで、それぞれに着飾った踊り手たちが醸し出す、都の桜の花めぐりが観客を酔わすのだろう。
 特に今年は囃し方が素晴らしく、笛も鼓も大鼓も神楽鈴まで、女性とは思われない鋭い演奏だつた。
 川面美術研究所の描く背景の桜の気分も、江戸の舞台装置にはないはんなりとしたタッチで、大いに雰囲気を盛り上げている。
 ラスベガスにも、ニューヨークにも、パリにもないトラディショナルなレビュー、それが都をどりだ。
  


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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