「このたびは円満離婚まことにおめでとうございます。若い二人にはまだまだ長い人生が待っています。明日から、いや今日からさらなる婚活に励み、新しい伴侶をみつけ第三の人生を歩まれることでしょう。しかし、離婚というのも決して悪いものではありません。かくいう私も離婚経験者ですが…」最近注目を浴びている離婚式披露宴会場でのひとこま。祝辞ならぬ弔辞の役をふり当てられた先輩は冷や汗をかきながらスピーチする。離婚イベンターによると、ここ三年は倍々ゲームで依頼者がふえているが基本料金は55000円に据え置かれたまま。
式はまず離婚の経過説明から、まさか「職場の上司との浮気が原因で…」ともいえず、人間関係のいざこざとか、異性関係のもつれとか、価値観の相違とか、両家ご両親の卒倒しないようオブラートにつつんだ言葉を用意するのがイベンターの技術だそうだ。
一般に男性は”名前をつけて保存” 女性は”上書き保存” といわれているが、女性はせいせいさっぱりとして、参列者をまえに、慰謝料のこと、財産分与のこと、はたまた養育費親権問題など、滔々と語りだす場面もあるそうだ。「あの人とは二度と同じ空気は吸いたくない」「殺してやる」などとテンションの高い離婚には、離婚式はむいていないが、結婚・離婚について冷静に語れ、友人関係も共通な草食系夫婦には、あとくされない別れの儀式として相応しいのかもしれない。
エリザベス・テーラーも宇多田ヒカルの母も七回も離婚しているのだから、人生の通過儀礼としての需要は多く、ホテル玄関の案内にお葬式会場とはかけないからと「偲ぶ会」が定着してしまったように、ホテルの宴会受付に「離婚式」ならぬ「それぞれの会」などというメニューが置かれるのもそう遠くない日のことかも。
明るい離婚式。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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