軽井沢に住んでいると時に都会の甘味が無性に食べたくなる。
とらやの羊羹などは、送り届けていただくことが可能なので、あまり困らない。
ネットにも全く登場せず、ましてや通販など考えられない、といった菓子類にまま惹かれる。 有名だがなかなかに手にはいらない銀座の甘味に「空也最中」がある。
配送、配達は一切せず、支払も現金のみ。遥か前に予約をし、約束の日に銀座6丁目の店に伺う。ぼぅと歩いていたら見逃してしまうほどの小さな店だが、そのたたずまいは品格に充ちている。小さいくせに周りのビル達を睥睨している。歴史とはこういうものだ、と無言の圧力をかけている、かのごとき風情。
あがりかまちの畳のうえに10個入りの箱がうず高くつまれている。一列、二列、三列…毎日8000個の最中を作る。一日240キロ十勝産の小豆を高純度の白ザラでしっかりした粒餡に仕立て、翌朝日本橋種満から届く皮に挟み込む。この種満の皮の絶妙な歯ごたえがたまらない。最中は本来餡が主役なのだが、その餡を包み込む皮の硬さ柔かさ、さらにその皮の焦がし具合い、歯障りが素晴らしい。空也最中にはこの皮しか考えられない。
新茶の季節になると、甘い香りたつ茶のかたわらに、「空也最中」のなんと似合うことか。
新茶と空也最中と
コメント
1件のフィードバック
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いいお話をありがとうございます。銀座は虎屋の羊羹と空也最中が何といってもナンバーワンですね。近頃、銀座にいろいろな新しいお菓子屋さんが出現して、選択の幅?が広がってはいますが、東京駅でも買えそうな品ばかりで、やはり老舗には老舗の味と風格がありますね。新茶と空也最中、星野先生は、至福の時間をお過ごしですね。
プロフィール

星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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