軽井沢には無数の文学碑がある。
室生犀星、堀辰雄、有島武郎、北原白秋、立原道造、与謝野晶子、等々数え上げたら切りのないほどの文学碑がある。それほどの文学者に愛されてきたこの町は文学の里でもある。
いま、その文学の里から本屋が消えようとしている。
旧軽井沢の商店街と中軽井沢駅近くにあった三芳屋書店は、高速道路が南軽井沢を通った長野オリンピックの頃、静かに閉店した。別荘に新聞も配達されなかったあの頃、書店のおじさんは毎日、自転車で本を届けてきてくれた。
それが県下一円を商圏とする大きな平安堂に取って代わられた。配達はなくなり、注文した本も忘れた頃平安堂に届く。
平安堂は半分が、レンタルCDとレンタルVIDEOに占領されていた。そのうえ書籍の50パーセントも漫画だった。その上料理、グルメにファッション、旅行書 あっても無くてもいいような本に占領されていた。
残された僅かな文芸書や新刊本のラックを頼りに平安堂に通ったが、書店もついに力つき、今月いっぱいの閉店となった。
敵は即日配本のアマゾンであり、無数のネット書店だ。これらのIT書店はベンリには違いないか゛手にとって本を見ることができない。世に氾濫する情報を頼りに、表紙の印象で買うしかない。
もうひとつの本屋の敵は公立図書館だった。読みたい本は図書館に連絡すれば、税金で購入してくれる。その上貸出は無料、かって街中に存在した貸本屋の無料版なのだから、ふところ不如意の庶民にとってこんな有難いシステムはない。が図書館にいってみると、暇つぶしの老人や、受験生の勉強部屋になっている。本当に本を必要としている世代はいない。
かくて文学の里に本屋はなくなった。
文学の里・軽井沢に本屋がなくなる。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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