振袖が見当たらない

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 正月のテレビをいくつか見た。
 驚いたことに新年の華やぎがまったくない。 振袖姿の司会者が少ない。撮り貯めてあったお笑い番組には、新人のアナなどが如何にもの振袖姿で並んでいるものもあった。がほんの少しで、番組販売の都合から正月を表に出さない方が売りやすいという、ビジネス本位の考え方が、番組から正月色を取り去っていると理解できた。
 軽井沢の街中を走っても、門松が見当たらない。 勿論振袖姿も見当たらない。
 かって美容院という仕事は、大晦日から新年にかけて、パーマの客やら、振袖の着付けやらで大忙し、三が日が過ぎて正月休みが多かったが、いまではその期間お休みというサロンが多い。
 お馴染み明治神宮の初詣にも、晴れ着姿の女子はほとんどいなかった。歳が改まり、晴れ着を着て、神仏に参るという習俗が廃れようとしている。
 世界に誇るきもの、なかでもたぐい稀な美しさをもつ振袖が、滅亡の危機に瀕している、この現実をクール・ジャパンなどといって浮かれている識者とお役人は、なんと考えているのか。
 この国の正月から、美しいものが、またひとつ消えようとしている。
 


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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