恥ずかしいキャンプ・グランピング

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恥ずかしいキャンプ・グランピング
 キャンプといわずグランピングというらしい。
 キャンプ本来の魅力ある野性味を全部けずって、キャンプの骨までしやぶる堕落きわまりない簡易旅行というべきか。
 近頃のファミリーはこんな形のキャンプが嬉しいときいて開いた口がふさがらない。まずキャンパスの布を張る楽しみがない。あらかじめ出来合いのテントハウスが造られている。それも土台からきちんと整地された場所に用意されている。凸凹の土地に工夫して張るキャンプの楽しさなど、何処にもない。
 予約して現地につけば、あらかじめ決められたハウスに案内され、メニューが提示される。
 黒毛和牛からなんとか豚、さらに海の幸、季節外れのとうもろこしまで、定番のバーベキューが用意され、炭起しも必要なくスイッチ・ポンでウッドデッキのバーべキュー大会が始まる。
 自然を楽しむ、野性を楽しむ、ことなど皆無で、すべて用意されたメニューにそってレジャーが粛々と進行する。
 夜は厚手のマットと西川の毛布にくるまって夢路をたどる。
 小洒落た小屋が数件建つ初島やら、峠を越えてすぐにある北軽井沢の森、あるいは北海道の原野の透明ハウスなど、初期投資の少なさで飛びついた旅行業者が考える、グランピングという珍しさに飛びつく貧しい庶民、国土が狭く、遠いアジアの田舎者にしか通用しない余暇のメニューに言葉を失う。
 中世のころから、子弟の教育や歴史体験に旅の習慣があるイギリス人にとっては、思いも及ばないキャンプの旅だろう。
なんでもかんでも商売に結び付ける日本人の恥ずかしい旅こそがグランピングとと認識しなければならない。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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