思い出旅行研究会のこと

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 男女4人の大学生が京都駅に降り立つ。
 4人は脇目もふらずにトイレに向かう。やがて出てきた男女4人は高校生よろしく学ランとセーラー服のカップルになっていた。聞けば高校時代の思い出旅行に来たのだという。学ランとセーラー服は東京からもってきた。「僕らはマルマル大学の思い出旅行研究会です」と悪びれたところはまったくない。二十歳にしてわずか三余年前の高校時代を懐かしむ。
 定年まじかの同窓会で昔を懐かしむで、いつか温泉にでも、というのは解りやすいが、大学生にして早くも思い出旅行というのはどうも理解の外だ。
 この時代未来に希望が持てないから、振り返るしか仕方がないのよ、と解説するむきもあるが、すこし早すぎるのではないか。希望は自分たちが創るものではないか。
 金閣寺を仰ぎ見る四人、鴨川べりを歩く四人には、原宿竹下通りを歩くコスプレ姿のプータローが重なって見えた。行き交う舞妓も観光舞妓の偽物だ。偽物たちが都大路を埋めている。
 人生にエネルギーを費やして後、思い出に耽るもよし、思い出に生きるもよし、人生に立ち向かう前から思い出探しではあまりに情けない。
 缶けり研究会、かくれんぼ研究会、パチンコ研究会、お化け屋敷研究会、マンガ研究会、廃校文化祭研究会、…そして思い出旅行研究会、これが一流大学のクラブ活動ではもやこの国の大学は絶望的な状況にあると言えよう。東大がアジアの大学ランク23位というのがとても良く理解できる。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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