平成のおかげ参り

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 式年遷宮とアベノミクスと中韓による日本虐めが、相乗効果をあげてお伊勢参りに火がついた。
 江戸徳川期の何百万人に及んだ集団参詣のおかげ参りと根本的に違うのは、信仰心の薄いお伊勢参りということだろう。伊勢神宮ってパワースポットなのよ、というのが今時のショート・パンツの認識のようだ。
 旅行代理店はお伊勢さんほど旅程が組みやすい処は他に見当たらない、といっている。
 神宮前のバス・プールから内宮大鳥居まで歩いて9分ばかりだが、この9分の街並、「おはらい町」と途中にある「おかげ横丁」にその秘密があるという。じっくり見て、食べて、買って、楽しめるあらゆる要素が盛り込まれてある。
 かってのバブル期後どん底に喘いだ時期があったそうだ。勿論お伊勢さんの参詣客はいない。きても門前のおはらい町は素通りで町には閑古鳥がないていた。
 この現状に立ち向かったのは、赤福を先頭とする町衆だった。まず商店街の家並みから直した。雑然としたバラバラの街並を江戸から明治期の伊勢路の建築様式に統一した。妻入り、きざみ囲い、トガの木を建材にしてかっての伊勢門前町を完全に演出した。その上、カーパークから大鳥居に至る9分に、あらゆる知恵を集中した。
 まず「食べる」には、てこね寿司、漁師汁、牛肉にこだわった豚捨、伊勢うどん、洋のハイカラさん、かき料理、特産のふぐ料理、そして赤福、駄菓子、干物や、こんにゃく、沢庵、時雨、地酒と、隅から隅まで目配りされている。 土産物も招き猫、香りや、伊賀の組紐、松阪木綿、横丁グッズなどいろいろに工夫され、若者から高齢者まで幅広く対応した店を揃えた。流行の体験には、版画、俳句、植木、太鼓、神話とあり、その上イベントは、おかげ市に始まり、風の市、料理市、伊勢楽市、恵みの市、朔日朝市、みそか寄席、朝粥、鏡びらき、ぜんざいふるまい と一年中これでもかのレパートリーだ。
 僅か歩いて9分の街並にこれだけのエネルギーは町衆みずからのパワーで、行政は一切かかわっていない。
かくして平成のおかげ参りが成立した伊勢ルネッサンスの物語だ。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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