寺山修司に再会した。
中田喜直没後20年の記念コンサートで、かってお二人のつくった作品「男と女のモノローグによる詩的オラトリオ・木の匙」の演出としてのこと。
喜直先生の作品とは昨年真理ヨシコ・コンサートで遭遇し、中田喜直のメロディの深さをあらためて味わった。
寺山修司の作品とは、1969年に書き下ろしてもらった「ミュージカル・涙のびんずめ」以来のこと。
うれし涙から悲しい涙、ひとりぼっちの涙まで、いろいろな涙を売っている「涙のびんずめ」屋が舞台だった。ポスターを描いてくれたのは、若き日の横尾忠則さんだった。
俺は汽車のなかで生まれた。だから故郷は汽車のなか……そんな言葉を口にしていた寺山らしく、男と女のはざまに吹くさびしさについて描かれている。男と女の存在について、あたり前のむなしさが主題になっている。
夏がくると妻を置いて旅に出たくなる男、悲しくなったときは海を見に行く女、人生はいつか終わるが、海だけは終わらない。 ひとりぼっちの夜も海を見に行く。
寺山修司の斜にかまえた人生観と、中田喜直の真っすぐな作曲がアヤをなした作品だった。
ウィーン育ちの田口久仁子・田口宗明夫妻の演奏も味があり、ピアノの織井香衣さんの言葉と効果にたいする神経が繊細で嬉しかった。
中田喜直夫人が、「いままでこんなに良い作品だとは思わなかった」と呟いていたので、多分上演は成功だったのだろう。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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