孤独のクリぼっち

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 クリスマスを一人で過ごす人のことを若者たちは「クリぼっち」と呼んで蔑む。
 大きなお世話である。一人で過ごそうが、二人で過ごそうがカラスの勝手だ。
 クリぼっちには、最近までフタリぼっちの相手もいた。約束のお泊りホテルが、彼女の不興をかって突然にクリぼっちになったのだ。なかには昨今の彼女らの行動にあきれて、みずから批判的クリぼっちになっている男もいる。
 あのバブル華やかなりし頃、誰言うとなくイヴは高級フランス料理をたべて、一流ホテルに泊まる。プレゼントはティファニーのオープンハート、いったい誰が言い出したのか、どうせ知恵遅れの御曹司か、キャバクラのオネェチャンの戦略に違いない。
 孤独のクリぼっちには、孤独のクリぼっちなりの理屈がある。
 仏教徒のお前らがなぜキリストの降誕祭をやるのか、意味がわからない。これはもう古典的な論理になった。
 クリスマスは神の日であって、恋人の日ではない。そのうえ未婚の娘がホテルに泊まるとは。いまや女性の初体験の相手が、配偶者より恋人の比率が高いとあっては、この理屈も通用せず、結婚までセックスは駄目というのは、絶滅危惧種のオヤジの意見なのだ。
 それでも苺の飾り物等ないブッシュ・ド・ノエルを買い求め、好きな紅茶をいれて暖炉の前のひとりスイーツというのもなかなかのクリスマス、その時窓のそとが雪景色なら最高のクリぼっちである。
 自由と孤独はセットなのだと、ものの本にかいてあった。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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