桜に先駆けて咲く花……コブシ。
こぶしは軽井沢の町花になっているので、町内のどこかの公園に行けば見られる、と思っていたら誤算だった。
町はグランドデザイン100年計画とか、打上げ花火のようなことは大好きだが、町花の公園を整備しようとか、コブシの道をつくろう、といった自然景観には興味をしめさない。
春がきたというしるしのコブシの花が見たくなったら、筆者は銀座へいく。東京の銀座である。
西銀座のコリドー街へいくとコブシの道がある。背景は味気ないコンクリートの塊だが、みどりの充満する軽井沢にそうした並木道がないので致し方ない。コリドー街のコブシたちは、白い香りを道いっぱいにただよわせ春をしらせている。
雄しべに囲まれて一個の花に雌しべが沢山ついているのは、原始的な花の証拠だそうだ。弥生、縄文の遺跡から発掘された種が発芽した例もあるという。
信州ではコブシの咲く頃、花桃の美しさが話題になる。南の果ての阿智村・昼神温泉郷に近く一キロ近く土手を埋め尽くして花桃が咲き乱れる。その美しさは千曲川の菜の花畑も、更埴のあんずも敵わない。昼神温泉の人達はほんとうに花桃を愛しているという心意気が伝わる。
時を超えてよみがえる縄文の花、軽井沢のコブシは寂しい思いをしていることだろう。
孤独な軽井沢のコブシ
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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