祇園町秋の催事の一番は温習会だ。春の都をどりが観光客相手とすれば、秋は芸妓舞妓の舞や囃しの技較べで、ご贔屓筋や専門家が客席をうめる。
今年はネズミの年に因んで、井上流のみに伝わる「子の日の遊び」という演目がでた。鼠のおちゅうさんの嫁入り行列に始まり、さいごは舞台中央に登場した大きな鏡餅を齧って終わる。
昔の町家では、御鏡をネズミに齧られると縁起がいいと喜んだ故事に習った江戸末期の作品と思われる。おおらかな江戸の頃の作風がなんとも嬉しく、関東方の流儀舞踊には見られない素直なつくりと、歳時記にそったテーマの取り上げが、芸能の位置づけをはっきりと示して興味深い作品となっていた。
鼠の衣装も白の襟にグレーの着物、黒の帯がモダンなハーモニーをつくり、最後に結んだ帯から尻尾がでる趣向も楽しかった。
お祝儀返しの小さなお菓子をどっさりいただいて軽井沢にかえってきた。
子(ね)の日の遊び
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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