大人可愛いって、キモイ

　いつの頃からか、犬、猫、爺々い、に至るまで、可愛いと感嘆詞を発するようになった女子。
　可愛くもない赤ん坊をつかまえて、可愛いを連発する女子たちのヤマイが一般女子に伝染して、国中どこでも可愛い・可愛いが蔓延した。大人はどこにもいなくなって可愛い共和国に占領されてしまった。
　46歳のYOU、39歳の平子理沙、37歳の深津絵里、梨花、この4人が大人可愛いの四大スター。ファンデを塗っていないかのようなベビースキン、高級ブランドからチープな服まで着こなして、いつまでもガールのような若さ…その程度の脳ミソを保っているのが、理想の大人ガールだそうだ。
　こうした大人ガールがレポーターを務めると、「わあ、凄い!」「わぁ、可愛い!」「わあ、柔らかい」、街のレストランからルーブル美術館まで、数種類の感嘆詞で間に合わせてしまう。もう少しなんとか言えよ、それじゃレポートになっていないだろ、と突っ込むと「ウザ!」「キモ!」でかたずけられる。
　これまで存在したエレガント、セクシー、ラグジュアリー、アダルトなどの価値観は吹き飛ばされ、「大人可愛い」が一気に王座についた。いい歳をして可愛いなんて、そこから抜け出せないのは未熟さの証拠だといっても、彼女たちには教養やボンサンスへの劣等感が皆無なので、歯がたたない。
　中国が国境侵犯しようが、原発復活を自民政権がたくらもうが、北朝鮮がミサイルで脅かして来ようが、TPPでこの国の農業が危機に立とうが、大人ガールたちの基本方針は、いくつになっても可愛さを追求すること、ツヤっと輝く40代女子力! いつまでも芸能人のように話題の中心にいてオンナ同志のワイワイ感がだせたらいいなあって、大人ガールたちのオシアワセなこと。　………。