売るものが無くなった芸人たち

　芸を売るはずの芸人たちが、売るものがなくなって困っている。
　次々と東上した吉本軍団も、始めはなんとか笑いをえようと、下品な芸に突進していた。　東京のメディア市場は、いやいやながらもコスト・パフォーマンスに惹かれ、芸人たちを優遇してきた。当時テレビ業界は寒冷期と呼ばれ、安上がりにできる番組こそが、メイン・コンテンツだった。
　がそれも飽きられてしまうと、話題のゲストをイジクル漫談芸のツッコミ役として後ろの階段に座った。ツッコミ役の出来ない芸人は、郊外のファミレスで人気メニュー当ての、飲食芸人になった。ファミレスやらジャンク・フードの毒見役も一巡して、さてどうしたものか、の今がやってきた。
　そうだ、売り物はまだある、芸人自身の暮らし向き、貧乏生活、過去の恥、ウソ、等などあらゆるプライバシーを売ればいいというのが、近頃のテレビ芸人たちなのだ。
　いわゆる内幕もの、告白もの、が次々と生まれだした。「私の何がいけないの」「アメトーク」「有吉反省会」「ストライクTV」等など、すべて芸人たちのカミング・アウトで成り立っている。私はマザコン、私は恩を仇で返しました、和式トイレででない、どうでもいいような事柄のなかに、ノゾキが大好き、カラーパンツが放せないという歌舞伎役者まで登場して、もういい加減にせい、の気分になった。