土用の丑の夏うなぎ

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 土用の丑とあれば、ウナギにふれなければならない。
 軽井沢にいて鰻を食べたくなれば、まず下諏訪の「小林」に行く。ときに四国四万十川のうなぎが入荷していれば至福の美味を提供してくれる。鰻は浜松と思いがちだが、四万十の天然ものにはかなわない。
 すこし元気が溢れていれば、松本の桜家へ。ここの「うなぎ笹むし」は凄い。蒸したおこわに程よくタレが効き、笹の香りに包まれた蒲焼のちまきが、なかなかに満足させてくれる。
 パリのフブサントノーレには「野田岩」が店を出している。異国でみる「うなぎ野田岩」の看板に眼を奪われるが、この店の鰻はいまいちふっくら感に欠ける。麻布の本店も昔から天然ものだからといって、やたら長いこと待たされたが、やはりすこし痩せた感じがあった。
 江戸前のうなぎの伝統をしつかり守って至福の味を出してくれるのは、赤坂山王さんの境内にある「山の茶屋」にとどめを指す。一座敷一客に限る誇りと手を抜かない仕事がうなぎへの心入れとなって素晴らしい。白焼き、肝焼き、蒲焼、肝吸いそれぞれに美味い。添えられた奈良漬けの微妙な味も大事だ。良き時代の座敷でゆったりと味合ううなぎの味は、これぞ日本の味である。
 とゴタクを並べたが、今日の土用の丑はスーパーつるやの、国産うなぎで間に合わすことにしよう。
                  「丑(ウシ)の字を瓦(カワラ)と呼んだ美人アナ」


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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