図書館栄えて作家滅ぶ

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図書館栄えて作家滅ぶ
 2014年フランスで、反アマゾン法(通称)が成立したとき、気楽に聞き流していたが、ここへ来て実はとても大変なことだと気がついた。
 新刊本や雑誌の送料の無料を禁止したのだが、背景にはフランス国内3.500店の街の本屋からの突き上げだった。送料がタダであれば多くの人がそちらに流れる。本は文化であり、モノではないのだから、本を中心にした多様性を守るべきという理屈だ。
 アマゾンによる大規模流通の被害はアメリカでも論じられ、大手出版のアシェットはアマゾンへの出荷数を制限し、なるべく街の本屋への配本を増やしているというのだ。
 巨大流通資本にコビを売るのではなく、対抗する方策を立てていかなければ、ますます社会の文化そのものが疲弊してしまうという危機感がある。
 さらに日本では公共図書館の在り方が、問題になっている。特に地方の公共公立図書館は、いま図書館ではなく、貸本屋になっているというのだ。町民の要求に答え、多くのベストセラー本をダブッテ揃え、無料で貸し出している。図書館は本屋の敵であるばかりか、作家たちの敵にもなっている。図書館で貸し出される本からは印税ははいってこない。
 作家の楡周平さんが「図書館栄えて作家滅ぶ」という論を発表し、出版社側から「ベストセラーを大量に買い付けて貸出サービスするのは止めて欲しい」と発言したところ、公立図書館から猛烈な反発を受け「公立図書館の貸出サービスは民主主義の原点である。それを否定するのか」と吊し上げられた、と新潮社の石井常務はいっている。
 ここでは公立図書館のユーザーの質は全く問われていない。ベストセラーに飛びつくB層と呼ばれる衆愚が、主役になっている。ポテチを売るのとは大違いなのだから、貸出冊数を競うだけのスーパーになって欲しくない。本こそは文化そのものだし、絶えず重層的に供給されなければならない。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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