商品になった「本」の哀れ

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 いま「本」は「文化」ではなく、「商品」になったといわれる。
 「著者と編集者での本作り」はもはや伝説の世界になってしまったと、さえ言われている。
 「体脂肪計タニタの社員食堂」「もし高校野球の女性マネージャーがドラッカーのマネージメントを読んだら」「バンド一本でやせる!巻くだけダイエット」これら実用本はいずれも、ネットやテレビを利用した販売戦略の結果、100万部のベストセラーになった。
 一度社会に喧伝されると、本を読まない人がつぎつぎと購買層になる。「流行っているんだから、読まなくては」と群衆心理を煽る。半年ごとに製品を腐らせていくファッション業界となんら変わることはない。女性だけのモラルのないPR会社が、「巻くだけ」も「タニタ」もヒットさせた。
 情報社会というのは、健康食品も、尿漏れパンツも、本も、みなネット通販商品と同じ扱いだ。そこに付け込んで、本という文化を商品にしようというビジネスが、跋扈している。
 最近もっとも上手く行ったのが「本屋大賞」だが、博報堂がからんで、テレビドラマ化や映画化を進めた結果、この利権に食いついた出版社やPR会社が、殺し合いをしていると伝えられている。
 しかし、そうした仕掛けに対し、読者もだんだん利口になり、マスメディアを信用しなくなってきた。フェイスブックやツイッターで褒めれば褒めるほど、「どうせ仕掛けだろ、」「金を貰ってやってんだろ」と、敬遠するようになってきた。フェイスブックから、つぎつぎとスポンサーが撤退し、ついに株式上場時の三分の一にまで株価が落ち込んだのが、なによりも雄弁に事実を物語っている。
 「いいね」は「八百長だね」になってしまったのだ。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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