谷口愛子というヘア・デザイナーがいる。
銀座四丁目、和光から少し有楽町よりのビルを見上げると、美容室谷口愛子の文字に出逢う。昔から新派の女優さん、歌舞伎俳優の奥様方に絶対的な信頼があった。ご本人の出目は知らないが、話をかわすとさっぱりとした江戸っ子気質でたいへんに気分のいい女性だった。
付け焼刃で髪をいじるのではなく、歴史や芸能にふれ、民俗の気分をきっちりと髪型に表現するのだ。劇場に足を運び、田舎も海外も飛び回って、いつも眼を肥し、腕をみがいている。人間的にも優しい温かさをもち、超絶技巧をもちながら控えめな人柄が素晴らしい。数多くのイベントやプレスにもひっぱりだこで、この国のアップの第一人者である。 それ故美容界のレジェンドといわれたり、多くの学校に招聘されたり、とにかく日本一のヘア・デザイナーなのだ。
いまを時めく小池百合子東京都知事も絶大な信頼を寄せ、当選の暁の断髪式から、日常のヘアまですべて彼女にまかせている。
彼女のデザインでなによりも素敵なのは、つねに品のあるバランスとシルエットを保っていることだろう。
ショートを創っても生意気にならない。ひけらかす知性ではなく、エレガントなショートになる。ヘアにおけるラインとバランスは、すこし崩れると日本人ではなくなる。その微妙なところをしっかりと抑え、つねに品位をたもつというのは容易なテクニックではない。
歌舞伎の奥様方が劇場の廊下に並んでご贔屓を迎えても、決して悪目立ちせず清潔感のある優雅な雰囲気を創っている。昨日今日でてきた原宿あたりの美容師とは全く異なる。
「さりげなく個々に美しく」それが彼女のクリエイティブをささえている。
品性にあふれた谷口愛子のショート・ヘア
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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