和食のなかで、もっともシンプルで美味い料理といえば、刺身を於いて他に考えられない。
魚を食べやすく美しく切って器に盛り付ければ、すべて良し。慣れない外人はこれが料理か、と驚く。煮焼きをひとつもせずに料理完了というのが、どうにも理解できないようだ。
魚それぞれに応じた切り方と盛り付け、ツマとして千六本の大根や、大葉、わかめ等のあしらいにも工夫は必要だし、ままワサビ、ショウガなどの添え物も欠かせない。江戸期、濃口醤油の出現も刺身にさらに華を添えた。醤油にとどまらず、酢味噌なども試された。
素材そのものの味を生かし、盛り付けの技術と、うつわの選択という意味から、日本料理の神髄に迫るのが、刺身料理だといえる。
切る作業だからナイフといった欧米スタイルではとても刺身は造れない。お造りと呼ばれるように、造るという感覚と仕事が要求される。だから刺身のためにはサシミ包丁がある。家庭の台所にある万能包丁や文化包丁では、とても刺身は造れない。
ハレの日のための姿作り、ふぐなどのそぎ作り、まぐろの引き作り、アクセントの花作り、あじのたたき、皮霜作り、いかの細作り、活け作り等、刺身の楽しみは果てしなくつづく。
和食の最高は刺身料理
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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