和食のグローバル化はいらない

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 銀座で近頃評判の高い和食やにいってきた。
 日本食の世界文化遺産登録いらい、あちこちでグローバルな和食とは、といった間違いだらけの和食が流行っている。和食にグローバルなどという思想はいらない。和食はアジヤの辺境の小さな日本にあってこその食文化だと思うのだが、それがそうでもないらしい。
 世界各地で開かれているクールジャパンのお手伝いに狩り出されたり、外人観光客が大挙して和食という文化遺産に憧れてこられると、つい日本人独特のサービス精神から外人の眼を意識した盛り込みや、味付けに流される傾向にある。
 出汁を中心にした和食は、鰹や昆布のかどをけし、まるくなったうすい出汁でなければならないが、そうした日本料理のいろはが忘れられ、はっきりした主張のつよい味に成りがちだ。淡い出汁であってこそ、季節の微妙な素材の旨みがひきだせるのだが、なかなかそうならない。外人の舌はそうしたデリケートな旨みを楽しむようにできていないし、眼も見た目の派手に引きずられる。
 輪をかけてこまるのは、マスコミの浅い眼だ。無責任にショウアップしたり、半年先まで予約のとれない店を持ち上げたり、一斉に食べていただくので5分前までに集合とか、客を客とも思わない不遜な料理やがはびこり始めた。安手のイタリア料理を真似した、大きな器の派手盛り乃至ちょこっと盛りなどは、和食の敵でしかない。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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