洋食と和食と中華、それぞれのコックさんのユニフォームについて、真剣にむかいあったことはなかった。
いつのころからかコックさんの顔写真を見かけるようになった。斜に構え、両腕を組み、カメラ目線でレンズを睨みつける。頭にはやたらに高いコック帽をかぶる。首には短いコックタイ、ふくらはぎまで隠れる長いエプロンはきりっと着けるが、それは火の熱や油とびから足を守るためだそうだ。前がダブルのボタン仕立てになっているのは、いつ客から呼ばれても、ボタンをはずして裏をかえせば清潔で綺麗な裏を表にし、挨拶にいけるように、といった心ずかいが服装全体にあるからだそうだ。
和食の料理人は高い帽子はかぶらない。折り返しのある低い帽子だ。シングルフロントで、必ずといっていいほど、白いワイシャツにネクタイをしめている。ネクタイは華美に流れない小さな柄の渋い色が多い。ネクタイをしめるスタイルは明治以降に相違ないのだから、きものの筈の和食料理人が少しばかり洋服のフォーマルを学んで、ネクタイ着用におよんだのだろう。エプロンの丈は洋食ほど長くなくほぼひざ丈が多い。
中華は、というと大黒様のような膨らんだ白い帽子が多い。洋のタテ志向に対して、中華はマル志向である。
火力の強いコンロで一気にしあげることがおおいので、通気性のいいメッシュタイプの帽子着用なのだ。
ワイシャツもきないで、下はランニングまたは大きく空いたユー・カツトの肌着である。前は比翼仕立てで、
釦はそとにださない。袖も七分でゴム入りの実用第一である。エプロンは洋食ほど長くなく、和食ほど短くないというのがお約束だ。
いずれも白が基調で、清潔感を前にだし、コンロの熱からもすこしばかり防衛できる効果ありだ。
近頃の若い調理人は、定番のコックコートを嫌い、カラーコートなどをきるようだが、こうしたコックコートにであったら、不味い料理にであったとあきらめたほうがよさそうだ。
小さなコックタイにもその店の思想があらわれている。
和・洋・中 それぞれのコックコート
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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