吾輩は猫である。 名前はまだない。
どこで生まれたか頓と見当がつかぬ。何でも薄暗いじめじめした所でニャーニャー泣いていたことだけは記憶している。吾輩はここで初めて人間というものを見た。しかもあとで聞くとそれはアラフォーという人間のなかで一番美しい種類だったそうだ。
アラフォーはいつまでも若くありたいために、体操したり、踊ったり、エステに通ったり、爪を磨いたり、化粧品に大枚を費やし、グルメ狂いに走ったり、マーケットの主役になっているという。
このアラフォーの掌にのせられ、少し落ち着いて見たのが、いわゆる人間というものの見始めであった。肌艶はよく吾輩にみせた笑顔は優しさにみちていた。さぞやいっぱいの愛情をくれるに違いないと、期待してアラフォーについていった。
驚いたことに、その家には10数匹の猫がいた。
愛情を独占できると期待した吾輩が馬鹿だつた。アラフォーのMAKIさんの家にはずばりボーイズ・ラブなグレイッシュな猫、マッチョな黒猫、コケツトなアラサー猫、自己偏愛の白猫、ミャーミャーとうるさい三毛猫まで、多種多様な猫が集まって、まさに猫プロダクションのていをなしていた。
吾輩のテンションはいっきに下がったが、瀬戸内の青島のように人間15人に猫100匹という環境よりマシかとあきらめた。
それに近頃では、Yモバイル、YKKap、じゃらんなど、コマーシャルの主役に猫が採用されることも多く、TV東京の週刊ニュース新書には毎回アイドル猫のニャーニャが出演し人気者になっている、和歌山では猫の駅長がいて写真集までだしている、人気ゲームの「ねこあつめ」は1300万件もダウンロードされている。
いま時代は、犬よさようなら 猫よこんにちは、ネコノミクスで難局を乗りきらねばならない。
吾輩は猫である。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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