「アンサンブル軽井沢」なるチャンバー・オーケストラがある。
陶芸家なのにファゴットに捕まったムッシュー、田植えの機械を作りながらヴァイオリンに頬ずりする人、旦那の転勤次第であしたは何処へのヴィオラ無宿、育児とチェロどっちが大事のお兄さん、喫茶店のマスターはコントラバスおやじ、リコーダーをフルートに持ち替えてのオネェサン、小学校の先生はマエストロ……と多士済々の社会人が集まっている。
今回のコンサートでは、詩人と農夫の序曲に始まり、バッハ、ラベル、ドビッシーと進み、リストのハンガリー狂詩曲、ビゼーのアルルの女で終わった。時間が経つほどにアンサンブルの音に艶がでてくるのは、こうしたアマチュア・オケの通例かもしれないが、土曜日の午後をおおいに楽しませてもらった。
会場がユニオンチャーチというのもいい。異人たちが軽井沢へやってきたとき、それぞれの宗派ごとに教会を作るのは大変、ということで一緒に一つの教会を作った、それがユニオンチャーチ、つまり合同教会なのだ。
まあ、禅宗と創価学会が共同使用のお寺を作ったと思えばいい。古いので当然の如くガタガタの建物、祭壇にはなにもなく、うしろの森が透けて見えるガラス戸がはまっているだけ。アンサンブルが乗るほどのステージは、牧師の説教台だったり、芝居の舞台にもなり、聖歌隊の場でもあった。お約束のステンドグラスの一枚もなく、教会と認識できるりは、会衆席の中央天井に白樺の枝を組み合わせた十字架がぶらさげられていることだけだ。
簡素なつくろいの中に、開拓者たちの思いが込められている。アンサンブルの素朴な響きを受け止めるには、絶好の空間であるともいえよう。
合同教会とアンサンブル軽井沢
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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