祇園甲部の芸妓舞妓すべてを見渡しても、「照」の字を継いでお座敷に出ているのは二人しかいない。
照豊と照古満、このふたりはかなりユニークな個性で、俗な言い方をすればB型タイプの独立独歩といったイメージが強い。
お姐さんのほうの照豊ちゃんは京都生まれ京都そだちの京おんな、舞妓から芸妓になるときは一年だか二年の休暇をとって、日本中をドライブしたり、海外旅行のすえに、再び祇園にもどってきた現代女性だ。頭の良さは抜群で、それを表に出さない賢さも備えている。
妹の照古満、通称コマちゃんはお江戸の真ん中、築地育ちのチャキチャキ娘。背は170センチに近く、祇園町の背比べ一番、豆鶴姐さんに次いでの高身長、見た目には蕗谷紅児描くところのモダンガールに近く、モデルさんと紹介しても通用する。キモノを脱いで洋服になると、どちらのお嬢さんかと見間違えるほどの美形。今人気の尾上松也とは小学校の同窓という江戸っ子のなかの江戸っ子でもある。
その照古満ちゃんが結婚することになった。
「好きで好きでたまらん」と彼女のいう果報者は、驚くことに千家十職のうちの若。
楽吉左衛門、永楽善五郎らとともに三千家家元の道具を、利休いらいの好みを守り、時代の工夫を加えて作りつづけてきた匠の家の跡取りである。
もっとも古風な十職さんと、江戸っ子上りの祇園芸妓との恋物語、なかなかの組み合わせ、そこいらの芸能人カップルより、はるかに奥が深い。十職という保守本流を無事に渡りきれるか、生き残れるかが見所。
頑張れ照古満ちゃんなのだ。
千家十職と祇園の芸妓
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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